2006年08月14日134号  自分の頭で考える

私はナニゴトもまずは自分の頭で考える習慣があります。
大学を出て中堅の洋菓子店に就職した早々から、
生意気にいろいろな意見を言ったり企画をするものだから、
上司から「だまって!バカになって仕事をしろ!」と怒られたのが、今でも鮮明な記憶として残っています。

あれから40年近くたったわけですが、人間の性格は変わるものではありません。
【ケーキ屋KENちゃん】時代はそれでも、好き勝手な事をやらしてもらい、
それなりに会社にも貢献したという自負もあります。
【保険屋KENちゃん】になって20年以上が経過しましたが…
この保険業界は…自分の頭で考えちゃいけないという”風習”があるようです。

先日、ある同業者から私のHPの掲示板に投稿がありました。
「約款にも載っていない事を勝手に書くな!」というものです。
私がネット上で、ある保険商品の保険料の仕組を説明するうえで
「いわばそれは暫定保険料…」と”たとえ”として表現したのが気に入らないようです。
暫定保険料なんて事は約款のどこにも載っていないというのです。

そして私がネット上で独自の考えを書いている事に対しては、
保険会社が代理店向けに出している簡単な問答集を持ち出して
「コレを基準に解答すべきで勝手な考えを書くな!」と結んでるのです。
その問答集には質問に対して
「一概に説明する事は困難でケースバイケース…」と書かれているだけなのです。

実はこのような考えは保険の世界では一般的なのです。
昨年の私のHP閉鎖騒動もこのことが根源にあると私は思っています。
少しでも判りやすく具体的にとの思いで表現すると同業者から袋叩きにあうのです(^_^;)
そのほとんどが”プロ”とか”専門家”との表示はあっても匿名で正体不明です。
私にクレームをつけてきたP氏は自分のURLを表示していますがイマイチ名前や顔はもちろん
何をHPで表現したいのかも私には見えてきません。
それは当然かもしれません、
自分の考えを判りやすく伝える事はいけない事だと思っているのですから。

こんなことで消費者に何が伝わるというのでしょうか?
私がネットやHPで書いている事が絶対に間違いが無いとは私も断言出来ません。
しかし契約者にとって重要だと思われる保険の情報開示は圧倒的に少ないのです。
こういったことを公開されたネット上であるからこそ、
自由に自分の考えを公表し議論をし、それを消費者が見て、自己責任で判断するというのが
健全な姿ではないかと私は思うのです。

この根源にあるのは”何か?”です。
それをつきつめると…【責任を取りたくない】という事につながるように思われます。
そして、この傾向は一般の契約者や相談者にまで転移しているようです。

保険相談の掲示板には毎日、数多くの保険相談が寄せられますが…
その中で最近とても多くなって来たのが、生命保険に加入する時の”告知”に対する相談です。
告知書に
☆5年以内に以下の病気(別表で表示)をしたことあるかとか…
☆3ヶ月以内に医師の診察をうけたか、投薬があったとか…色々な質問がされているのです。
もちろん、わかっている限り正しい告知をしなければなりません。
問題は本人も忘れてしまったことや、5年前だったのか、5年以内だったのかが定かでない場合です。
このような事について、掲示板に、どうかけば良いかの相談があります。
それに対して、多くのプロが、それは全部、正確にしらべて告知しなければならないと
”タテマエ”の解答をします。
それをネット上で見た人が、「そういえば自分はそこまで正直な告知していない!」と不安になって
掲示板に投稿してきます。
それに対して、また多くのプロが「それはいけまん正直に調べて至急追加告知をしてください、
保険金が支払われなくなる可能性があります」…また”タテマエ”の解答をするのです。
こうなったら、もう次から次に同じような質問と解答が繰り返されます。

私はこのような質問には、なるべく解答しないようにしているのですが…
あまりにも低次元のやり取りに見かねてコメントをいれます。
「ココに路上駐車して良いかと警察官に聞くような事はしないで、契約者の自己責任で
判断したらいかがでしょうか?」と…。
ところが、これには相談者には納得出来ないようで、
「それで、もし給付金が貰えないければどうなるの?!」と聞き返してくるのです。
「だったら、皆さんが言うように、すべてを正確にモレなく調べて、納得のいく告知してください」
というしかありません。

実際にこのような女性のお客様がいました。
4年ほど前に不眠症が続き社内の医療室で診てもらったところ、
「軽いノイローゼ」と医師から診断され一度だけ薬を貰ったというのです。
たしかに告知書に5年以内の告知すべき病気の一覧にノイローゼが入っています。
しかし、精神系の病気は死亡率の高い自殺の可能性もあると見られて
生命保険ではとても厳しい判断がされるのです。
そのお客様が生命保険に加入する目的は将来の年金移行を考えて終身保険に加入しようというものです。
私の方から告知義務違反を誘導するような事はけっして言えませんから、
”ノイローゼ”には厳しい判断が下される可能性が高い事を話して、
「あとは自己責任で告知書に記入してください」と言いました。
お客様は、それから数日考えたすえ、すべて正直に書かなければ保険に加入していても
不安になるので…という事で告知書に記入して提出しました。

その結果は引き受けの延期、ようするに保険会社からの契約拒絶です。
本人はとてもショックをうけていました。
他社に加入しようと思っても、告知書の下欄には
【5年以内に生命保険契約を申し込んで、不合格・条件付または契約解除になった事がありますか】
というところがあるのです。

このような軽微と思われる通院は、告知の時に本当に忘れている人もいます。
私の友人で人間ドックに行くのと健康管理が趣味のような男がいます。
彼は健康そのものですが血糖値や血圧をとても気にして医師からも色々アドバイスを受けています。
したがって彼が告知書に正直に書くとなると、大変な量の医師からの指摘を書かなければなりません。
しかし、私はもうココ10年ばかり健康診断ひとつしていません。
多分、人間ドックや健康診断をしたらすぐにでも入院しろといわれる身体かもしれません。
しかし、私の告知書には、すべて問題ナシです(^_^)

告知書とは、その程度のモノなのだという事を認識しておく事もたいせつです。
したっがて4年前のノイローゼを何らかの理由で告知されなかったとしても、それが理由で
保険金が支払われないとか、保険契約が解除になる事はマズ考えられないのです。
マズと書いたとは”絶対”ではないからです。
何から何まで重箱の隅をつっつくように心配していたら、保険に加入する前に病気になってしまいます。

最終的には自己責任で判断するという事です。
そして、万が一、将来保険会社がその事を理由に保険金を支払わないとしたら
保険会社と闘うくらいの覚悟があってもいいくらいです。
そのくらいの気持ちが契約者にあればMY生命やMS海上の保険金不払の事件もおきなかったでしょう。

保険を売る側も、加入する側も…結局、自己責任はとりたくないという事のようです。
でも、それはとても窮屈なもので、かえって保険本来の価値を見失うような気が
私にはしてならないのです。

我々は数え切れない、また想像もつかないような色々なリスクの可能性の中で生活をしています。
その中で保険がカバー出来る事はごくわずかです。
そんな保険にも全て加入していたら破産してしまいます。

自分にとって最も心配なリスクは何か?
それを保険でカバー出来るのか?
無数のリスクの中から、限られた予算で安心を買うのが保険だと私は思っているのです。

そのようなダイナミックな視点から、お客様と生活や人生の価値観を共有しながら
保険と関わっていきたいと思っているのですが…
現実はまだまだ厳しいようです(^_^;)

P.S.
本当は埼玉での市営プールの吸排水口での死亡事故に絡めて
マニュアル化で思考停止した現代の無責任社会について書こうと思ったのですが
ツイ保険の話となると熱くなり(^_^;)書きすぎてしまい…
そこまで、たどりつきませんでしたm(_ _)m

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