2007年02月26日162号 F君の定年

私の学生時代の同級生がぞくぞくと定年を迎えました。
大学時代の同級生は、けっこう年上がいたりして、何年も前に定年になった者もいますが
飛び級制度の無い我が国の学校システムにおいては、
この3月末をもって私の同級生は全員60歳を超えてしまうのです。

その中の一人で2月に定年を向えたF君の家にYUKIと訪ねました。
F君は学生時代から、とても几帳面で真面目な性格で”信用金庫”に就職を決めたときも
みんな彼にピッタリだと思いました。
そして、みんなの予想通り?に”その信用金庫”を定年まで勤め上げました。
しかし就職した時の信用金庫と、定年になった時の信用金の名前は違っていました。
数年ほど前に吸収合併されてしまったのです。

それでも几帳面で真面目なF君は家族のためにも歯を食いしばって頑張ったようです。
その長男は東大を卒業しJRに就職し、昨年6月プラハで結婚式をしたようです。
ちょうどその時期に、我がファミリーもW杯のドイツ旅行でプラハに行っており奥様との話は盛り上がったのですが
F君は長男の結婚式には出席しなかったのです。
社内の”イジメ?”で休暇も取れず、あと8ヶ月の我慢とあきらめたようです。

次男も早大の院生で自立をしたようで、F君は二人の息子をリッパに育てあげ、
無事定年を迎え肩の荷もすっかりとれ、少し太ってとても穏やかな表情になっていました。
会社に嘱託として残るという選択肢もあったようですが…
もう2度と同じような仕事はしたくないというのがF君の思いのようです。

テーブル上に外資系生命保険会社の代理店募集の案内資料が置いてありました。
F君に訊ねると、
「どこから情報を得てくるのかしれないけど、金融機関の定年退職者を対象に代理店募集をして、
主に外貨建の一時払の個人年金保険を販売さそうとしているみたいだね」…と言いました。
本人は、こんな商品をあたまから信用しておらず、まったくその気も無いとのことでした。

団塊の世代の退職金が大きなマーケットとして狙われているようです。
豪華なパンフレットには素晴らしい?内容が書かれているようですが
金融の”プロ”でもあったF君は何度も読んでも結局よく判らなかったようです。
生命保険の”プロ”でもある私も見たのですが、よく判りませんでした。(^_^;)

代理店勧誘の担当者は電話で「そんな難しい勉強や知識は必要ないですから…」と言ったそうです。
ようするに、金融機関を長年勤め上げた者の”顔”で同世代の退職金マネーを狙おうというのでしょう。

どうも保険会社というのは、私のように、お客様本位をタテにヘリクツを言う代理店(募集人)より、
保険会社の勧める主力商品を黙ってもくもくと売ってくれる…
ようするに『売る機械』を求めているように思えることがよくあります。

そのようなにして売ろうという”商品”とはどのようなものでしょうか?
詳しい内容までは判りませんが、収益性が高く
それを売ったF君も、保険会社も潤う商品であることは間違いないでしょう。

それは保険を販売しそれを生業(なりわい)としている私のような代理店も同様かもしれませんが
細く長く地道にやっている代理店はお客様を裏切ったらオシマイだという事です。
すなわち『売る機械』ではやっていけないという事です。

私が”この手の商品”を扱うとしたら、徹底的に商品分析をし、メリット、デメリットを充分に説明し
お客様の自己責任を確認した上で加入して頂くことになるでしょう。
しかし、私がそこまで説明したなら多分、多くの契約は貰えないように思います。

なぜなら私は保険屋で”投資”についてはプロではないからです。
これらの商品の多くが、リスクを契約者に押し付けているのです。
契約者の多くも”投資”のプロではないはずです、もし投資のプロならこんな商品に手を出さないでしょう。
”投資”のプロは、この商品を開発した保険会社にいるかもしれません。
その保険会社がリスクを取らないで、契約者にリスクを取ってもらう商品をつくったのです。

保険会社まかせにして、リスクだけ取らされるなら、自分で納得した投資をしたほうがマシと
私自身が思ってしまうのですから売れるわけありません(^_^;)

今、世間では、格差がどうした!弱者切捨てがどうした!とか言っていますが…
日本経済を支えているのは,そのような弱者たちではないでしょうか?

宝くじ・競輪・競馬でささやか夢を追い、高いタバコ代で財政に寄与し
高いローンでの買い物をし、消費者金融を潤わし…
安物買いの銭失いをするのも、投資の犠牲者という役目を担わされるのも…決まって弱者です。
すなわち、この国の経済が成り立つためには、何時までも愚かな弱者が必要だという
皮肉な見方も出来ないことはないのです(^_^;)

40年近く金融の仕事をしてきたF君も、20年保険屋をやってきた私も、同じ視点はあったようです。」
F君はサラリーマンとして、その矛盾に耐えながらやっと定年を迎え、これからは罪滅ぼし?に
ボランティアでもしたいようです。
幸か不幸かサラリーマンでなかった私は定年も退職金もありませんが…
この仕事をライフワークとしていける幸せを噛み締めることが出来た一日でもありました。

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