2004年7月26日027号 八百屋のマイケル

マイケルと云っても、彼はれっきとした日本人のおじさんです。
八百屋と云っても、彼には本職がありスーパーの青果売場のパートです。
パートと云っても、彼は昔から青果売場にいて主のような存在です。

なんでマイケルかと云うと…ある時、彼が私達にマイケル・ジャクソンの大ファンだと言ったのです。
そのギャップ がオオウケし、それ以来、我が家ではマイケルで通っているのです。
むろん本人は マイケルと呼ばれていることは知りません。

私とYUKI(たまにヒロコも)は毎晩8時過ぎに近所のスーパー『マルエツ』にいくのが日課です。
この時間になると生鮮食品に半額シールが貼られるからです。
それ以外の物は買わない!…というのが我が家の掟です。
もうこんな生活が10年ほど続 いています。
そして、ほとんど毎日マイケルと顔を合わすのです。

マイケルはとても元気がいいのです、お客様には何時も声をかけています。
ひとけの引いた夜のスーパーで、小まめに動き回る小柄なマイケルは いつも目立っているのです。
店内放送からもマイケルの声が流れてきます…
「 ニッポンの夏。…何と言ってもスイカです!ただいま青果コーナーにてカット・スイカが半額~」
値下げした野菜 や果物を、彼独特の能書きを交えたマイケル節での店内放送には、
何時もYUKIと顔を合わせて笑ってしまうのです。

でもマイケルも、生活は苦しいようです。
毎日、半額の物しか買わない私達に親近感を持ってくれているようです。
そして何時も怒っているのです、 本業の社長の悪口、仕事での愚痴、社会の事…
でもマイケルが怒れば怒るほど何故か可笑しいのです。
奥さんや高校生のお嬢さんから 如何に虐げられているか…なんて話になると、
私は他人事とは思えず、涙を浮かべるほど同感し ながらも…笑ってしまうのです。

マイケルの唯一の趣味は競馬のようです…これだけは止められないようです。
でもその競馬ですら、いつも怒っているのです。

馬券売場でのマイケルの話です…小銭を含めて現金で馬券を買おうとしたら
売場の女性が「5円玉は使えません!」と指ではじき返したというのです。
これにマイケル はキレたのです、5円玉が使えないというのも納得出来なかったようです。
しかし、そばにいた初老の人の良さそうな警備員が、懸命に頭を下げて謝ったそうです。
警備員に謝られても…と マイケルは思ったようですが、
すぐ に納得しちゃうのがマイケルの良いとでもあり、弱いところなのです。

でも腹の虫は収まらず翌日、仕事中(配送の仕事)に何時も車中で聞いている
民放ラジオ局にケータイから怒りをぶつけた そうです。
そして、しばらくすると、自分の名前がラジオから聞こえてき たと言うのです。
番組でマイケルの”怒り”が採用され、しかも5000円が貰え て少しは腹の虫が収まったと喜んで、
原付バイク で会社から帰ろうとしたら、バイクが盗まれていたと いって…
猛烈に怒っているのです。

どこまでも不運なマイケルですが、私にとっては、とても心がなごむ…
愛すべき、八百屋のおじさんな のです。
今夜も半額の見切品を、いやいやマイケルに逢いに、YUKIとマルエツに行きます。

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