2007年02月19日161号 鳥の歌

私は目を閉じながら、 すぐ近くで演奏されているピアノと歌の世界にすっかり引き込まれていました。 流れている曲は「鳥の歌」…チェロの巨匠・カザルスの名曲です。

私が最初にカザルスの名前を知り「鳥の歌」という曲の存在を知ったのは 作家・五木寛之の小説【戒厳令の夜】や彼のエッセイでした。 五木寛之は私の学生時代と同時進行の流行作家で 【さらばモスクワ愚連隊】【青年は荒野をめざす】【蒼ざめた馬を見よ】など 我ら世代のバイブル的存在で、友人の多くもシベリア鉄道で荒野をめざしました(^_^;)

大学時代、私はスペイン語をカジッていましたが、 その頃のスペインはフランコ独裁政権のまっただ中でした。

スペインのカタロニア地方(首都バルセロナ)で1876年に生まれたカザルスは スペイン内戦からフランコ独裁政権と続く母国スペインを離れ、 プエル・トリコを本拠に音楽を通しての平和活動家でもあったのです。

カルザスが94歳の時の1971年、ニューヨークの国連本部で 「私の生まれ故郷カタロニアの鳥は、ピース(平和)ピース(平和)と鳴くのです」と語り、 『鳥の歌』をチェロ演奏した事は伝説ともなっているのです。

なんだか解説が長くなりましたが(^_^;) 五木寛之が魂の名曲と「鳥の歌」をと熱く伝える小説やエッセイは読んでも、 その曲を聴くチャンスはしばらくなかったのですが、なにげなく聞いていたラジオから 流れる曲が「鳥の歌」と知った時は感動したもでした。

その「鳥の歌」がピアノの生演奏と歌唱で流れているわけですが… 私の青春時代と、カザルスの望郷カタロニアの風景らしきものがクロス・オーバーし(^_^;) 不思議な世界の中に私は漂っていました。

ピアノを演奏したのは岩崎良子さん。 私の友人の亡くなった奥さんの妹さんで、何かとお逢いする事があったのですが 演奏会に行ったのは今回が始めてで、もちろんピアニストととしてココまで実力のある 人とは思っていなかったので感激でした(^_^;)

良子さんとジョイントした石井三榮子さんの歌唱力にも驚きました。 ニコリともせず迫力溢れる二人の中年女性がステージに表れた時は、 どうなることかと思いましたが(^_^;) だてに歳はとっていないようで…いや歳をとっているからでしょうかm(_ _)m とても、とても、心にしみる歌唱で、音楽にウルサイYUKIもすっかりファンになってしまいました。

ジャズ・ピアニストである良子さんと高見沢宏昌さんのサックスのジョイントも最高でした。 高見沢さんは良子さんとは学生時代からのジャズ仲間で、いつもお金が無くて電気も止められて いた貧乏学生だったそうですが、どういうわけか今では銀座のジャズ・クラブのオーナーだそうです。 その二人の息がピッタリとあった演奏はとてもいい味を出していました。

私達が行くことは良子さんにも連絡せず、 どのようなコンサートなのかも判らない当日券を買っての気ままな参加でしたが それほどの期待もしていなかっただけに、感激はひとしおで次回のコンサートにも行こうと YUKIと話し合っています。 まったく肩のこらない、特に中年高年にお勧めのオトナのコンサートでありました(^_^;)

P.S. カザルスの「鳥の歌」の演奏を聞いた事がありますか? 今ではパソコンで簡単に聞けるのですね、私もビックリしています。